はじめに
「御社のツール、便利そうだなとはわかったのですが、うちの〇〇業務だとどう使えますか?」。お客様との商談で、こうした質問をいただくことは珍しくありません。
私はAcsimの営業 兼 カスタマーサクセス(CS) 兼 プロダクトマーケティングマネージャーを担当しています。以前、非エンジニアのCS担当がAIでJSON自動修正ツールをつくった話という記事を書きましたが、今回はツール開発ではなく、**セールス・CS活動の「型化」**についてお話しします。
お客様からいただく相談には、業種ごとにある程度パターンがあります。そのパターンに対する提案が、これまでは自分の頭の中にしかありませんでした。それをAcsim Docsというナレッジサイトにドキュメントとして整備し、GitHub x Cursorの組み合わせで営業・CSチームが自分たちでコンテンツを作成・更新できる仕組みにしたことで、提案の標準化が進んでいます。
本記事では、この取り組みの背景と具体的な進め方をご紹介します。SaaS企業でセールスやCSを担当されている方にとって、何かのヒントになれば幸いです。
お客様の業種ごとに異なるAcsimへの期待
Acsimはシステム開発における要件定義の効率化・標準化を支援するツールです。当初はSIer様を主な想定顧客として営業を開始しましたが、サービスを提供していく中で、事業会社の情報システム部門、BPOベンダー、IT・業務改善コンサルティング会社など、さまざまな業種のお客様からお引き合いをいただくようになりました。
業種が異なると、お客様が抱えている業務課題も異なります。当然、Acsimに対する期待も変わってきます。
たとえば、SIer様であれば「要件定義フェーズの属人化や非効率を解消し、チーム全体の生産性を上げたい」というニーズが多い。事業会社の情報システム部門であれば「ユーザー部門・ITベンダーとの合意形成を効率化、品質向上したい」「社内の業務プロセスを可視化して業務改善につなげたい」。BPOベンダー様であれば「提案段階の業務フロー作成から受託後の運用フロー詳細化までを一貫して効率化したい」。
こうした業種ごとの期待の違いに応じて、提案の仕方やお伝えする活用方法も変える必要があります。
提案の「属人化」という課題
業種ごとの提案パターンが見えてくると、お客様から「こういうことってできますか?」「うちの業務だとどう活用できますか?」と聞かれたときに、ある程度の「型」を持って回答できるようになってきます。
ただ、その型がずっと自分の頭の中にしかない状態でした。商談の場で口頭でお伝えしたり、メールで個別に回答したりはしていたのですが、それだと自分が対応するときしか伝えられません。今後メンバーが増えたときや、自分が手一杯のときに同じ説明ができるかというと、正直心もとない。であれば、頭の中にある提案パターンをどこかに書き出しておいたほうがいいだろうな、と思うようになりました。
もう一つ気になっていたことがあります。お客様が社内でAcsimの導入を検討されるとき、担当者の方が社内の関係者に説明する場面があるはずです。そのとき、「こういう業務課題にはこう活用できる」という具体的なドキュメントがあったほうが、お客様も社内調整がしやすいのではないかと。口頭でお伝えした内容を、お客様が社内に持ち帰って説明する段階で、どうしても情報が抜け落ちてしまうので。
自分の頭の中にある提案の型を、お客様にそのまま渡せるドキュメントにしたい。これが次のテーマになりました。
Acsim Docsに業種別の活用シナリオを整備する
そこで活用しているのが、Acsim Docsというナレッジサイトです。
Acsimにはサービス概要資料がありますが、概要資料では「Acsimとは何か」「要件定義がどう変わるのか」「どんな機能があるか」「どんな事例があるか」を広く伝えることを目的としているため、業種ごとの細かい運用方法までは書いていません。一方で、お客様が実際に知りたいのはもっと具体的な話です。実際にAcsimを操作する現場の方であれば「自分たちの業務でどう使うのか」という具体的な利用方法が気になりますし、導入を判断する決裁者の方であれば「導入によって何がどう変わるのか」「費用対効果はどうか」といった別の目線の情報が必要になります。どちらの情報も、概要資料だけではカバーしきれません。
この具体的な活用シナリオを、Acsim Docsに業種別で整備するように進めています。
たとえば、SIer様向けには「プリセールスにおけるAcsim活用 ─ 提案スピードと説得力を両立する方法」や「顧客との合意形成におけるAcsim活用 ─ 認識のズレをなくし、手戻りを防ぐ実践手法」といったページを用意しています。BPOベンダー様向けには「BPOベンダーにおけるAcsim活用 ─ 業務設計・運用フロー作成の効率化」や「BPOベンダーにおけるAcsim活用 ─ 提案段階の概算見積作成の効率化」を整備しています。
いずれも、その業種のお客様が現場で抱えている課題を具体的に記載したうえで、Acsimを使った場合の業務の流れをステップごとに解説する構成にしています。実際に、Acsimを検討中/利用中のSIer様やBPOベンダー様などにこうしたシナリオをご提示し、活用や導入検討のヒントにしていただいています。
こうした業種や業務別のドキュメントがあることで、お客様にとっての解像度が上がります。「自分たちの業務がどう変わるか」のイメージが湧きやすくなりますし、お客様が社内でAcsimを紹介する際にも、このドキュメントをそのまま共有いただけます。口頭で聞いた話を自分で資料にまとめ直す手間が省けるぶん、社内調整のハードルも下がるのではないかと考えています。
さらに、活用シナリオだけでなく、Excelで作成したコスト削減シミュレーションも用意しています。「Acsimを導入したら業務がどう変わるか」という定性的な情報と、「どの程度のコスト削減が見込めるか」という定量的な情報の両面で、お客様の社内稟議をサポートする意図です。
GitHub x Cursorで「思いついたらすぐ形にできる」環境
活用シナリオのドキュメント化が大事だとわかっていても、作成に時間がかかるなら、どうしても後回しになります。「あのお客様向けにこういうページを作りたいな」と思っても、ページの作成や公開に手間がかかるようでは、日々の営業活動の合間に取り組むのは難しい。
ここで効いているのが、GitHub x Cursorという組み合わせです。
Acsim DocsはFumadocsというフレームワークを使って構築されており、各ページのコンテンツはmdファイルとしてGitHubリポジトリで管理されています。つまり、mdファイルを作成してGitHubにプッシュすれば、それがそのままAcsim Docsのページとして公開される仕組みです。
ここでCursorが活躍します。Cursorはコーディング向けのAI搭載エディタですが、コードだけでなくドキュメント作成にも非常に使いやすい。「BPOベンダー様において、こういう課題があって、Acsimなどを使って、こういうふうにやれば、解決できる。そのプロセスを紹介するページを作りたい」といった要領でCursorに伝えれば、mdファイルの叩き台を作成してくれます。あとはそれをレビューして調整し、GitHubにプルリクエストを出すだけです。
この流れのおかげで、営業・CSチームのメンバーが自分でコンテンツを作成し、レビューを経て公開するまでを完結できるようになりました。エンジニアチームにページ作成を依頼する必要はありません。
実際の運用フローは以下のような形です。
- 商談やCS対応の中で「このパターンの提案、今後他の案件でも使えるはずなので、ドキュメントにしておいたほうがいいな」と気づく
- CursorでMDファイルの叩き台を作成する
- 内容をレビュー・調整する
- GitHubにプルリクエストを出し、必要に応じてチームでレビューする
- マージすればAcsim Docsに公開される
「セールス・CS活動を後押しするコンテンツを作りたい」と思ったら、すぐにそれを形にできる。この仕組みと環境が整っていることが、提案の型化を継続的に推進できている最大の理由だと感じています。
なお、ナレッジ管理であれば一般的なSaaSツールでもできるのでは、と思われるかもしれません。実際、NotionやZendeskなどでもナレッジベースは構築できますし、AIによる叩き台生成も各ツールで対応が進んでいます。私たちの場合は、GitHubが組織全員が日常的に使う共通基盤であることが大きいと思っています。コンテンツの管理もその上に乗せることで、PRベースのレビューや変更履歴の管理が自然にできますし、「今後やりたいこと」で触れる機能リリース連動の自動化にもつなげやすい。ツールの優劣というよりは、自分たちの組織に合った選択だったと感じています。
今後やりたいこと
現在の仕組みでも十分に回っていますが、さらに進化させたい部分があります。
一番やりたいのは、Acsimの機能リリースとAcsim Docsの更新を連動させることです。現状、Acsimに新機能がリリースされたら、その機能に関連するAcsim Docsのページを手動で更新しています。しかし、理想としては、機能リリースが社内で発表された時点でAcsim Docs側に自動的にプルリクエストが起票され、あとは担当者がレビュー・調整するだけ、という流れにしたい。
実際、いまも「この部分の記載、機能が更新されて古くなっているな」と気づいていながら、日々の業務の中で手が回らずそのままになっている箇所があります。機能の更新情報からドキュメントの叩き台が自動生成される仕組みが実現すれば、こうした「気づいているのに直せていない」状態を減らせるはずです。お客様に最新の情報をタイムリーに届けるうえでも、この自動化は取り組みたいテーマです。
まとめ
本記事では、お客様への提案を型化するために取り組んでいることをご紹介しました。
- 業種ごとの提案パターンを認識する: SIer、事業会社、BPOベンダーなど、お客様の業種によってAcsimへの期待は異なる
- ナレッジを外在化する: 頭の中にあった提案パターンを、Acsim Docsに業種別の活用シナリオとしてドキュメント化する
- 更新を仕組み化する: GitHub x Cursorの組み合わせで、営業・CSチームが自分でコンテンツを作成・公開できる環境を整える
「お客様にどう提案するか」のナレッジが個人の頭の中にだけある状態は、組織としてはリスクです。一方で、ドキュメント化のハードルが高ければ、忙しい日々の中で後回しになってしまう。GitHub x Cursorという仕組みがそのハードルを下げてくれたことで、「作りたい」と思ったときにすぐ形にできるようになりました。
同じようにSaaS企業でセールスやCSを担当されていて、「提案ナレッジの共有をどうするか」に課題を感じている方の参考になれば幸いです。
Acsimは、システム開発における要件定義の効率化・標準化を支援できるツールです。
「要件定義の効率化をしたい」「AIを活用した業務改善の事例を知りたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
