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DX・AIが停滞する組織は、なぜ要件定義でつまずくのか

DX・AIが停滞する組織は、なぜ要件定義でつまずくのか
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DX推進に取り組む企業から、「要件定義ができる人がいない」という声が絶えません。経済産業省の調査によれば、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。 ただし、現場で不足しているのは「IT人材」という大きな括りではありません。足りないのは、ビジネスと技術の両方を理解し、要件を具体的な形に落とし込める人材です。

かつて要件定義は、業務フローを整理し、必要な機能を洗い出せば一定の水準に到達できる仕事でした。しかし状況は変わりました。技術の選択肢は増え続け、同時にビジネス環境の変化も加速しています。 「何を作るべきか」という問いに、以前のような正解は見えにくくなりました。その結果、要件定義に求められるスキルは一人で担える範囲を超えています。

システムアーキテクチャや最新技術を理解する技術スキル、業務を構造として捉え課題の本質を見抜くビジネススキル、多様なステークホルダーを調整し合意形成を前に進めるマネジメント、そして不確実性の中でも判断して推進する力。これらを兼ね備えた人材はどの企業でも希少であり、要件定義は特定の「できる人」に集中しがちです。集中が進むほど、なぜその要件に至ったのか、どの選択肢を捨てたのか、どこにリスクがあるのかといった判断のプロセスは見えなくなり、暗黙知としてブラックボックス化していきます。組織としてナレッジが蓄積されず、改善サイクルも回らない。結果としてDXは停滞する。

本記事では、この構造的な問題を整理し、AIを活用した解決アプローチを考えます。

要件定義に求められるスキルの多様化

ビジネスの高度化は、要件定義の難易度を確実に押し上げています。かつて企業のIT投資は、既存業務の効率化が主目的でした。紙の帳票をシステム化する、手作業を自動化するなど、ゴールは比較的明確で、要件も定義しやすい環境にありました。しかし現在、企業がDXに求めているのはビジネスモデルそのものの変革です。IPAの「DX白書2024」によれば、DXに取り組む企業の73.7%がビジネスモデル変革を目的に掲げています。新しい顧客価値の創出、データを起点とした意思決定、エコシステムの構築など、要件定義は「正解のある設計」ではなく、答えのない問いに向き合う仕事へと変化しました。

同時に、AIをはじめとする技術進化が、要件定義の前提そのものを揺さぶっています。生成AIの登場によって、「システムに何ができるか」という境界線は曖昧になりました。従来は、人が担う業務とシステムが担う処理を比較的明確に切り分けることができましたが、AIが文章を書き、画像を生成し、コードを書く時代においては、その線引き自体が要件となります。どこまでをシステムに任せ、どこに人間の判断を残すのか。この判断には、技術の可能性と限界を正しく理解していることが不可欠です。

結果として、要件定義者にはビジネス戦略の理解と最新技術の知見の両立が求められるようになりました。さらに、多様なステークホルダーを調整しながら合意形成を進めるマネジメント力、不確実な状況下でも前に進める推進力も欠かせません。これほど多様な能力を一人で備えた人材は、極めて希少であると言わざるを得ません。

人材不足が引き起こす「属人化」の罠

希少な人材は、どの企業においても引く手あまたです。その結果、要件定義は特定の「できる人」に集中していきます。短期的には、この状態は合理的に見えます。その人が関与していればプロジェクトは前に進み、難しい調整や複雑な判断も滞りなく処理されるためです。周囲は安心し、次第にその人への依存が強まっていきます。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。その人の頭の中でどのような検討が行われ、なぜその要件に至ったのか、どの選択肢が排除され、どこにリスクが残されているのか。こうした判断のプロセスは周囲からは見えず、暗黙知としてブラックボックス化していきます。

問題が顕在化するのは、その人が不在になった瞬間です。異動や退職はもちろん、短期間の休暇であってもプロジェクトが停滞することがあります。引き継ぎを行おうとしても、前提や背景が言語化されていないため、暗黙知の壁に阻まれます。後任は完成した成果物だけを前に、なぜそうなったのかを理解できず、判断を下せないまま立ち尽くすことになります。

この状態では、組織としてのナレッジは蓄積されず、改善のサイクルも回りません。同じ失敗が繰り返され、同じ課題に何度もつまずく。属人化は短期的には効率的に機能するように見えても、長期的には組織の学習と成長を確実に阻害します。この構造的な問題に、どのように向き合うべきなのでしょうか。

Acsimが提供する3つの補完

Acsimが取るアプローチは、AIによって人の能力を補完することです。Acsimが提供する補完は、「思考」「スキル」「プロセス」の3つに整理できます。

思考の補完

要件定義で最も難しいのは「何を考えるべきか」を見極めることです。経験豊富な要件定義者は、過去の事例や失敗を引き出しながら、検討すべき論点や見落としがちなポイントを先回りして洗い出します。

一方、経験の浅い担当者は、そもそもどこに論点があるのかが分からず、思考が局所に閉じがちです。Acsimでは、AIが関連情報や検討観点を提示することで、この思考のプロセスを補完します。一人で手探りするのではなく、AIとの対話を通じて思考の幅を広げ、判断の質を高めることができます。

スキルの補完

要件定義の成果物である設計書や業務フロー、プロトタイプを形にするには、一定の専門スキルが求められます。内容を理解していても、それを適切なフォーマットに落とし込み、第三者が理解できる形で表現することは容易ではありません。

Acsimでは、対話を通じて整理された内容をもとに、設計書や画面プロトタイプといったアウトプットを生成できます。アウトプットのスキルをAIが補うことで、経験の浅いメンバーであっても、要件を具体的な形として提示できるようになります。

プロセスの補完

要件定義には、本来「進め方の型」が存在します。しかし、その型を知らなければ、どこから着手し、次に何を検討すべきか判断できません。結果として、議論が発散したり、重要な検討が抜け落ちたりします。

Acsimは、次に取るべきアクションを示し、要件定義全体を前に進めるガイドとして機能します。迷ったときに立ち返れる指針があることで、要件定義は属人的な作業ではなく、再現性のあるプロセスへと変わっていきます。

使いながら学ぶ ― 人材育成としてのAcsim

Acsimの本質的な価値は、使う過程で要件定義の考え方を学べる点にあります。AIが提示する観点や進め方は、ベテランの要件定義者が頭の中で行っている思考プロセスを可視化したものでもあります。「なぜこの観点が重要なのか」「なぜこの順序で検討するのか」を理解しながら作業を進めることで、要件定義に必要な思考様式が自然と身についていきます。

従来、要件定義のスキルは、ベテランの横について長い時間をかけて経験を積むことでしか習得できませんでした。しかし、そのベテラン自身が不足している今、従来型の育成モデルは現実的ではありません。Acsimは、AIをメンターとして活用することで、経験の浅いメンバーであっても、実務を通じて要件定義を学べる環境を提供します。

使えば使うほど、要件定義の考え方が定着し、これまで属人化していた暗黙知は組織の形式知として蓄積されていきます。Acsimは、目の前のプロジェクトを前に進めるためのツールであると同時に、要件定義ができる人材を継続的に育てる仕組みでもあります。

これからのAcsim

生成AIの進化は目覚ましく、できることは日々広がっています。Acsimもその進化に合わせて機能を拡充し、より実務に耐える精度と再現性を備えた支援ができるよう開発を続けています。要件定義という、これまで「人にしかできない」と考えられてきた領域において、AIがどこまで思考や判断を支えられるのか。その限界を見極めながら、実務で使える形に落とし込む挑戦を私たちは続けていきます。

要件定義を、負担の大きい属人的な作業から、ワクワクできる前向きで創造的な仕事へと変えていくことが、Acsimが目指す未来です。

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