はじめに
プロダクトづくりにおいて重要なのは、ただ単に "いいものを作る" ことだけを目指すのではありません。
顧客にとっての課題に向き合い、アウトカムにつながる打ち手を、優先順位をつけながら選び続けること が大切です。
とはいえ、顧客接点はどうしてもセールスやカスタマーサクセスに偏りやすく、開発チームまで、その接点で得られた情報が十分に届かないことも少なくないでしょう。
結果として、アウトカムを意識する機会を失ってしまうことにもなり得ます。
本記事では、チーム全員が顧客視点に立ち、アウトカムを意識したアクションが取れるよう、日々の顧客接点ログをAIによって資産化・共有するAcsim事業部の取り組みをご紹介します。AI活用事例としても参考になる内容ですので、ぜひ一読ください。
ログはあるものの「点在」してしまった顧客の声
ROUTE06では全社ワークスペースにGitHubを採用しており、セールスやカスタマーサクセスも含め、すべての活動はGitHubのIssueやDiscussionに記録されています。
そのため、情報は一元化され、誰もがアクセスしやすい状況にはなっているものの、点在したIssueやDiscussionを、能動的にすべて追うことは現実的ではありません。 重要な情報と、そうではない情報が入り混じった中、そこからインサイトを得ることは容易ではありませんし、当然、情報を整理してプロダクト改善に繋げるIssueを作成することも難しい、という問題がありました。
Agent SkillsによるビジネスサマリーとIssueの生成
とはいえ、必要な情報はすでにGitHub上に集約されています。 そこで、AIエージェントによって「指定した日に作成・更新されたログを収集し、要点をまとめ、得られたインサイトからIssueを生成する」という仕組みを、Agent Skillsで作ることにしました。
- 指定日の商談・顧客対応ログをghコマンドで取得
- 共通フォーマットで要約
- ハイライトと懸念点を抽出
- ネクストアクションを提案
- 必要なものはIssueとして起票
といった一連の流れを遂行するSkillです。
作成したSkillは、Claude Codeを起動し、以下のように日付を指定してコマンドを叩くことで利用できます。
/daily-business-summary 2026-02-24
サマリーは、単なる要約ではなく、次のような「意思決定と行動」につなげるための構造にすることを意識しています。
## 本日の商談・対応一覧
実施された商談の一覧(企業名、概要、温度感)
## 詳細サマリ
商談ごとの詳細(参加者、背景・経緯、議論内容、最終的な温度感、ネクストアクション)
## ハイライト
よかったこと / 懸念点 / 特にフォローが必要な点
## ネクストアクション(Issue候補)
顧客の声をもとに、プロダクト改善やフォローアップなどのアクション案
(必要なものは同時にIssue化)
生成されたサマリーは顧客フィードバックを集約する専用のSlackチャンネルに通知し、ネクストアクションは自動でIssue化されます。
顧客の声がより近く鮮明に
仕組み化の効果は思っていたよりも大きいものだったと感じています。
- 適度な情報量に圧縮されることで、取りに行けるようになった
- 点在するログを探し回るのではなく、まず日次サマリーを見れば全体像が掴める
- エンジニア・デザイナーが顧客フィードバックを前提に動けるようになった
- "今なにが起きているか" が共有されることで、改善が顧客起点になりやすい
- Issue化がセットなので、重要な声が見過ごされにくい
- 「気づいた人だけが覚えている」をなくし、チームとして判断できる状態になる
特に、Issue化までが一つの自動的な仕組みとして構築されていることで、自然と顧客の声を起点にアクションの優先度をつけられる状態になったことは価値が大きいものでした。
AIによって誰もがアイデアをすぐに形にできる時代
ちなみに、この仕組みは思いついてから構築完了まで1時間もかかっていません。
しかも時間の大半は、
- どんなサマリー構造が読みやすいか
- どこまで書けば行動につながるか
- どういう粒度なら毎日見られるか
といった設計や調整が占めており、実装自体は、AIにプロンプトを投げ、プランニングし、実行で10分ほどです。
AIによって、エンジニアリングの知識がなくても、アイデアさえあればすぐに形にできるようになったいま、とにかくやってみることの重要性が非常に高くなったと感じています。
おわりに
アウトカムを意識することが重要だとは理解しつつも、行動に移すことは簡単ではありません。
しかし 日々の情報の流れを整え、顧客の声から次のアクションを起こすきっかけを仕組み化する ことで、行動に移すハードルを下げる一助になるはずです。
もし、似たような課題や、そうでなくても何かしらのアイデアがあるなら、まずはそのアイデアを形にしてみてはいかがでしょうか。
